top of page
袋小路の記憶
展示空間であるBLUE DRESS は1960年代、イギリスで花開いたモッズカルチャーに心酔したオーナーがそのスタイルを受け継ぎ自らデザインした服を主に扱っている。渋谷の裏通りの袋小路の半地下に隠れるようにして構えた店は、生地の色や質感なのかどこかノスタルジックな雰囲気が漂う。モッズについては映画「さらば青春の光」(原題:「四重人格」1979年)を見たぐらいしか知らなかった。映画は英国政府の国有化などによる産業保護政策で経済不振が進むなか、階級格差を背景にしたモッズの若者たちの日常の光と影が描かれている。もっとも、自分の興味は映画のなかのイギリス南部の海沿いの街ブライトンの様子でもあった。当時、1992~1994年までブライトンの大学に在籍し絵を学んでいた。玉砂利の海岸を歩く音、冷たい冬の海。
映画の長いラストシーンでは主人公が盗んできたスクーターで白く切りだった崖の上を夕日が照らされた海を背景に暴走する。そしてついに転落する/しない で終わる。2022年の渋谷の街の一角で再び海外の遠く離れた街の日々が蘇るがそれは個人的なことに過ぎない。しかし展示は間接的にその記憶も含めて構成されるだろう。2022年6月 平田星司